PTCジャパンは、3D CADソリューションの最新版「Creo 12」に関する記者説明会を開催した。同社 社長執行役員の神谷知信氏は、大型アップデートとなったCreo 12のリリースを皮切りに、日本市場での展開をさらに強化する考えだ。
PTCジャパンは2025年6月9日、3D CADソリューションの最新版「Creo 12」に関する記者説明会を開催した。
説明会の冒頭、同社 社長執行役員の神谷知信氏は、日本の製造業を取り巻く環境について「極めて困難な局面に直面している」と警鐘を鳴らした。米国による関税政策やサプライチェーンの流動性の問題に加え、中国をはじめとする新興国の台頭により、「コストや開発スピードの面で厳しい競争環境にある」(神谷氏)と指摘した。
さらに、労働人口の減少に伴うエンジニア(特にソフトウェア人材)の不足や、レガシーシステムによる運用の継続といった、いわゆる「2025年の崖」が、日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の足かせになっているとし、神谷氏は「こうしたシステムをオープンアーキテクチャへ速やかに移行する必要がある」と強調した。
一方、製品開発の在り方にも変化が表れている。自動車業界における「SDV(Software Defined Vehicle)」に代表されるソフトウェア主導の開発が医療機器分野など他産業にも広がりつつあり、法規制やサステナビリティへの対応も喫緊の課題になっている。
「製造業は複合的かつ同時多発的な課題に直面している。グローバルでDXへの投資が今後さらに加速する見通しだが、これらの複雑な課題を解決し得るのはテクノロジーの力であると確信している。PTCの使命は、そうしたテクノロジーをいかに早く届け、お客さまの課題解決につなげるかにある」(神谷氏)
PTCは今年(2025年)で創業40周年を迎え、日本での展開も30年以上になる。デジタルとフィジカルをつなぐデジタルスレッドを実現する広範な製品ポートフォリオを展開する同社だが、特に近年は、業種や業界を問わず、PLMやCADに対する需要が着実に高まっているという。
こうした状況を踏まえ、PTCジャパンでは「CAD」「PLM」「ALM(Application Lifecycle Management)」の3分野を事業の柱と位置付け、パートナーシップやSaaS(Software as a Service)戦略、マーケティングの強化を通じて、製造業の課題解決を実現するテクノロジーリーダーの地位確立を狙う。
神谷氏は「PTCのソリューション群によって実現されるデジタルスレッドの起点となるのが設計であり、約40年にわたり進化を続けてきた『Creo』がその中核、心臓部といえる。現在、国内市場におけるCreoのシェアは決して高いとはいえないが、Creo 12のリリースを皮切りに、より一層の展開強化を図る」と意気込みを示した。
Creoの競合優位性は、3Dを“正”とした「モデルベース製品開発(MBPD)」、ジェネレーティブデザインに代表されるAI(人工知能)やリアルタイムシミュレーション機能を活用した「シミュレーション主導の設計」、外部SaaSや多様なアプリケーションとの柔軟な連携を可能にする「オープンアーキテクチャ」の3点に集約されるという。「われわれPTCジャパンは、こうした強みをもって国内製造業のDXを力強く推進していく」(神谷氏)。
続いて、同社 ソリューションコンサルティング ディレクター 執行役員の財前紀行氏が、Creo 12の主な機能強化ポイントについて解説した。デモンストレーション(記事中に埋め込んだ動画の内容)は、同社 ビジネスディベロップメント ディレクターの芸林盾氏が担当した。
現在、Creoは“SaaSファースト”の考えに基づき、四半期に1度のペースで、SaaS版である「Creo+」のアップデートを行っている。「Creo 11」のリリース以降、2024年9月に「Creo+ 12.0.0.0」、12月に「Creo+ 12.1.0.0」、2025年2月に「Creo+ 12.2.0.0」、5月に「Creo+ 12.3.0.0」と、計4回のアップデートが実施され、「Creo+ユーザーに対して、常に最新機能をいち早く提供してきた」(財前氏)という。
今回発表されたCreo 12は、これら4回のアップデートに含まれる全ての新機能を統合したバージョンで、「Creo 12.4.0.0」として提供される。合計で250以上の機能強化が盛り込まれた大型アップデートとなっている。
なお、4回のCreo+アップデートには、コンフィギュレーション配布、サービスプリンシパルのサポート、通知機能の改善、外部とのコラボレーション時のパフォーマンス向上、コメント/マークアップ機能の追加などが含まれる。
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