次世代リチウムイオン電池向け導電ペーストの生産能力増強を支援:製造マネジメントニュース
日本ゼオンは、Sino Applied Technologyの資金調達を主導すると発表した。これにより、次世代リチウムイオン電池向けとなる、単層カーボンナノチューブを使った導電ペーストの生産能力増強を支援する。
日本ゼオンは2025年5月26日、台湾のSino Applied Technology(SiAT)の資金調達を主導すると発表した。
SiATは、次世代リチウムイオン電池に用いる、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)を使った導電ペーストの生産能力増強を計画している。日本ゼオンは、SiATの総額2000万ドル(約28億8557万円)規模のシリーズC資金調達ラウンドを主導し、同計画を支援する。
日本ゼオンは、2015年に独自技術スーパーグロースを駆使して、世界で初めてSWCNTの量産化を成し遂げた。「ZEONANO」のブランドで純度、比表面積、アスペクト比に優れたSWCNTを製造、販売している。
SiATは、20年以上電池用ナノ材料の開発に携わっており、SWCNTを均一に分散させて安定性のある導電ペーストとして製品化する独自のノウハウを保有する。SiATがZEONANOを使用して2024年から開発した導電ペーストについて、電池メーカーでサンプル評価をしたところ、リチウムイオン電池の正極と負極に微量添加すると、エネルギー出力とサイクル寿命を改善することが分かった。
SiATは、今回調達した資金を活用し、導電ペーストの生産能力を2030年までに年間2万5000トン(t)に増強する。日本ゼオンは、SiATにSWCNTを供給するメインサプライヤーとして日本国内におけるSWCNT粉体の生産を拡大し、CNT事業のさらなる市場開拓を進める。
リチウムイオン電池は、電気自動車やドローン、eVTOL航空機など民生向けのほか、AI(人工知能)サーバBBU(バッテリーバックアップユニット)、再生可能エネルギー貯蔵システム、自動化ロボティクスなどの産業分野でも需要が急拡大している。また、SWCNTは、電池のエネルギー密度とサイクル寿命を飛躍的に改善する材料として需要が増えている。
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