三菱重工は社内の全体最適で「桁違いのスケール拡大」を目指す製造マネジメントニュース(1/3 ページ)

三菱重工は中期経営計画「2024事業計画」(2024〜2026年度)の進捗状況について説明した。2024事業計画では、事業基盤と財務基盤を強化し、事業成長とさらなる収益力の強化に取り組むことを掲げている。

» 2025年06月02日 08時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 三菱重工業(以下、三菱重工)は2025年5月28日、中期経営計画「2024事業計画」(2024〜2026年度)の進捗状況について説明した。

 2024事業計画では、事業基盤と財務基盤を強化し、事業成長とさらなる収益力の強化に取り組むことを掲げている。2024年度は、受注/売上収益/事業利益/キャッシュフローがともに過去最高だった。受注はエネルギーや防衛の伸長事業を中心に計画を大きく上回り、受注残が10兆円を超えた。

中期経営計画の進捗[クリックで拡大] 出所:三菱重工

 2026年度には売上高5.7兆円以上、事業利益4500億円以上、事業利益率8.0%以上を目指している。足元の2024年度の実績は売上高が5.0兆円、事業利益が3831億円、事業利益率は7.6%となっている。

 事業環境は、相互関税などによる世界的な景気後退の懸念、安全保障の枠組みの不確実性などで先行き不透明な状況にある。カーボンニュートラルに関しては、政策の変化により再生可能エネルギーや水素、アンモニアなどの普及に停滞傾向がみられるが、地域の特性に合わせた現実的なエネルギー転換への理解が市場で深まり、天然ガスの果たす役割が高まりつつある。

2026年度の業績目標[クリックで拡大] 出所:三菱重工

10兆円を超える受注残、製品やサービスを着実に顧客に届ける

 2024事業計画の残りの期間では、重点領域である伸長事業(GTCC=Gas Turbine Combined Cycle、原子力、防衛)と成長領域(データセンター、エナジートランジション)にはリソースを集中的に投入し、事業遂行能力を高めて10兆円を超える受注残の製品やサービスを着実に顧客に届ける。また、将来を見据えた研究開発や設備投資も積極的かつ合理的に実施する。

 伸長事業は事業遂行能力を向上させるため、生産能力を増強する。サプライチェーンの強靭化や設備増強、新工場の建設も実施。工場は高機能化や自動化、IT化を進める。また、組織横断タスクフォースによる増産準備支援も行う。人的リソースは1.2倍に、研究開発費と設備投資は合計で1.7倍に増やす。

 成長領域のデータセンターは、電源/冷却/制御の既存製品とエンジニアリングによってワンストップソリューションを提供する。すでに機電設備の供給事業を開始した。高負荷変動など新たなニーズには次世代配電/冷却技術や、機械システムの知能化で対応する。米国には事業拠点を設立し、グローバル市場での事業展開に取り組む。

 同じく成長領域のエナジートランジションは、水素やアンモニア、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage、分離/貯留したCO2の利用)の社会実装に向けた経済性の課題を解決する開発を加速させる。CCUSは姫路CO2回収パイロットプラントが稼働した他、エクソンモービルとの次世代CO2回収技術の開発を加速させている。また、標準モジュール化した「CO2MPACT」も投入した。水素やアンモニアに関しては、ACES(Advanced Clean Energy Storage)の建設を完了して試運転を開始した。SAF製造に寄与する高効率な水素製造装置の開発も進めている。

事業ごとの対応。重点領域にはリソースを集中的に投下する[クリックで拡大] 出所:三菱重工
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