投資ファンドのTOBに牧野フ賛同「当社の理念を理解」、2025年12月めどに実施へ製造マネジメントニュース

MMホールディングスは、牧野フライス製作所に対してTOBを実施することを発表した。牧野フライスも、MMホールディングスによるTOBに賛同する意見表明を行った。

» 2025年06月05日 07時30分 公開
[長沢正博MONOist]

 MMホールディングスは2025年6月3日、牧野フライス製作所(以下、牧野フライス)に対してTOB(株式公開買い付け)を実施することを発表した。牧野フライスも同日、MMホールディングスによるTOBについて賛同の意見表明を行った。

ニデック上回る買い付け価格、過去に韓国工作機械メーカーに投資

牧野フライスに対するTOBの開始予定に関する文書 牧野フライスに対するTOBの開始予定に関する文書[クリックで全文へリンク]出所:牧野フライス

 買い付け価格は1株当たり1万1751円で、買い付け下限数は議決権数の3分の2に当たる1559万2300株となっている。今後、国内外の投資規制法令に基づく許認可の手続きを進め、現時点で、TOBの開始は2025年12月上旬までを予定している。なお、牧野フライスに対して同意なきTOBを実施したニデックの買い付け価格は1株当たり1万1000円だった。

 MMホールディングスは、独立系PE(プライベートエクイティ)ファンドのMBKパートナーズの100%子会社で2023年9月に設立された。2005年設立のMBKパートナーズは、これまで韓国、中国、日本において80件の投資実績があるとしている。現在、約315億米ドル(約4兆5000億円)の運用金額で、小売り/消費財、通信/メディア/テクノロジー、金融サービスおよびヘルスケアの分野を中心に大企業、中堅企業に投資。日本では、コメダや黒田電気、アリナミン製薬など15社18件の投資実績があり、韓国の工作機械メーカーDoosan Machine Toolsにも投資したという。

 今回のTOBに当たって、必要な資金の準備も完了している。返済順位が最も高いシニアレンダーとなる三菱UFJ銀行、みずほ銀行、横浜銀行、あおぞら銀行が合計で1299億8000万円、返済順位の低いメザニンレンダーとなるみずほ銀行およびMCPメザニンが合計で129億9800万円を上限として融資を行う用意があり、MBKパートナーズファンドも1610億円の直接または間接のエクイティファイナンス(新株発行による事業資金調達)を行う意向がある。

 牧野フライスは「MBKパートナーズは当社の理念を理解し、当社の製品およびサービスの付加価値をさらに高めるための支援をいただけるとのことであり、本取引後も変わることなくお客さまのお困りごとの解決に真摯に向き合い続けることができるものと考えている。さらに、MBKパートナーズの過去の投資経験などを踏まえた経営ノウハウ、人材面および資金面からの支援を受けることにより、事業計画の達成の蓋然性をより高め、企業価値の向上を実現できると考えている」としている。

 牧野フライスを巡っては、ニデックが2024年12月27日にTOBの予告を発表した。その後、牧野フライスは複数の第三者から初期的な買収意向表明を受領し、比較検討の時間を確保するため、2025年5月9日以降へのTOBの延期をニデックに要請。そして、TOBが同日以降に延期されない場合は、ニデックが保有する株式を希釈化する対抗措置を導入した。

 しかし、ニデックは牧野フライスの同意を得ないまま、従来の予定通り、2025年4月4日にTOBを開始した。これを受けて、牧野フライスは対抗措置の発動を株主総会に付議。ニデックは東京地方裁判所に対抗措置の差し止めを求めて仮処分命令の申し立てを行ったが却下され、同年5月8日にTOBの撤回発表に至った。なお、MBKパートナーズは2025年5月7日に最終提案書を提出した。

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